思えば意図せず母親の不倫の口裏合わせをしていたあたりから潜在的に悪い人間だったのかもしれない。
物理的に生きられなくなるまで生きようと思った。要は無一文になって何も食べられなくなれば死ぬしかない。私はこれを何度かやろうとしては、家に逃げ帰ったり何らかの理由で立ち直ってきたが、今度はもうそういう心配がない。
高校の頃、夜に弁当を詰めていたら『うちはそんなに貧乏か』と小言を言われてやめたのを思い出した。最も身近な人間が常に反面教師だった。苦痛でしかない。もうそういうことしか思い出せない。
ガソリン代と銭湯代が実質的な家賃になっていた。食欲がなくこんにゃくゼリーを常食していた。内臓を病むとご飯が美味しくないのが辛いよね。ストレスを感じると腸の働きが鈍る。腸内フローラの生成にも影響が出るらしい。小さい頃からずっとこんなんだったから痩せすぎで太れないんだと思った。腸内フローラが何なのかは知らない。
調子が良くなってくるとスーパーでうぐいすパンとじゃがりことお惣菜を買い、それから図書館に行くのが常だった。ブルボンのココナッツミルクが美味しかった。
やがて貯金が底をつき、それからタリーズのカードとTポイントカードの13000+3000円分のみで30日間生存した。どんだけカードで遊ぶのが好きなんだと思った。
追い込まれるごとに買い物の内容も洗練されてくる。ケチャップと食パンだけ買い続けるのがおそらくベストだったが、気づく頃にはもう遅い。
どうせなら美味しいものをたくさん食べればよかった。どこへでも行けばよかった。砂漠を見てみたいなとなんとなく思った。京都に行った時、鳥取まで足を伸ばせばよかった。もうどこへも行けない。