- ひきこもりが悪化しすぎて実家に帰った
(一人分の生活費を一人で捻出できなくなった) - ひきこもりが発生するような家なので居心地が悪い
- → 車で寝よう
ひきこもりに戻ってしまった。ストレスを抑えきれなくなると私はひきこもってしまう。
ひきこもってる時はとにかく寝ている。寝ることでストレスから逃れようとする。明日が来るのが嫌でいつまでも起きていて、今日という日から目を背けたくて太陽が落ちるまで寝ている。
安心して眠れる場所があるからひきこもれるとも言える。しかし、それがなくなったらどうだろうか?
車で寝るのである。
はじめに
この記事は最近流行り? の車中泊の手引きではなく、ひきこもりをこじらせすぎて家にすらひきこもれなくなった者の手記です。
一人でずっと寝ていてもしかたない、このままではいけない、もしかしたら車中泊してみたい人の役に立つかもしれないと思って書くものです。
もくじ
1回目の車中泊
まず3回もこんなことしてるんだと意識すると苦しくなってしまう。
車種 | 軽貨物車 |
装備 | ダンボール 冬物のコート 毛布2枚 |
期間 | 2月下旬~4月上旬 |
停車位置 | 山 |
お給料で買ったはじめての車。一番近いお店の一番安い中古車。当たり前だが人が寝るようにはできていない。後部座席を倒して縦横約130cmのスペースで寝ていたが、斜めに寝ても足を伸ばしきることができない。 寒すぎるので夜中エアコンをかけていた。春が近づいていたため朝になると暖かくなり安心して眠れた。会社の近く |
ひきこもりとは停滞である。そして人生はエスカレーターだ。ベルトコンベアーだ。ルームランナーだ。停滞は後退だ。
1マス戻る。戻り続けた先はスタート地点。それ以上戻れない場所=実家。私も戻ってきてしまった。実家は島
士農工商。職種もかなり限られる土地だが、運良く島唯一のホームページとか作る会社に就職する。しかし9時9時で働きながら資格を取らなければいけないプレッシャーに耐えられず休みがちになる。最終的に家から蹴り出され*1、会社にも行けず、初めて車で寝た。
ちょうど今くらいのクソ寒い会議室。「ほっといたら死にそうだから」という理由で採ってくれた会社だった。東京で営業をしている社長がたまにやってきては、いろんな話を聞かせてくれた。「人間一人いるだけで蛍光灯一本分くらいの熱が発生する」。寒い寒い車の中でこの言葉を噛み締めている。
役員の3人すべてが健康診断でオールD
2回目の車中泊
こんな島にはいられない。一人暮らしには保証人が必要である。唯一なってくれそうな母方のばあちゃん
リスカ画像アップする人の気分が少し分かった
しかし生還。「人体は頑丈すぎるので死ぬのは100%ムリ」という事実を身体で理解し、一周して元気になる。大した怪我もしなかったため即バイトはじめて貯金を作り、再び島を脱出しようと試みるも失敗。
車種 | 軽ワンボックスカー |
装備 | 家で寝るような布団 |
期間 | 11月上旬~8月中旬 |
停車位置 | 海・山・川 |
いつかの冬に私を守ってくれた家は全損させてしまったため、寝たきりになった親戚のおじさんの車を勝手に乗り回していた。 図書館と銭湯と車内をひたすらループして過ごした。前回はずっと山にいたので気づかなかったが、夜スーパーの駐車場などに停車しているとすぐ職務質問される。免許証の提示を求められ、練炭などの不審物がないか車内を改められる。これは、ハンドルにひっかけるとテーブルになる板です。 職質を避けるには標高の高いところ |
人間は泣くことがある。誰かに支えられていると心の底から実感できた時。支えてくれる誰かを失った時。映画や小説で感動する時もこのシチュエーションが多いのではないだろうか。
私は誰にも支えられずフラフラしていたから、逆に誰かを支えることで生きようと考えた。こういう心理をメサイアコンプレックスというらしい。うまくいかなかった。毎日泣いていた。何が悲しくて大の大人が毎日泣いているのか、一人で抱えておくことができず、こんな風に文章として書き残しておくためだけにこの頃は生きていた。
海水浴場で職質された際に車検が切れそうになっていたこと・捜索願が出ていたことから実家に強制送還された。家を出てから9ヶ月後のことだった。最後のほうは一日の食事がケチャップかシロップだけの日が多かった。21世紀なのにせっけんで衣類を手洗いしていた。銭湯に行くガソリン代も渋るようになっていたが、海開き後は海水浴場のシャワーが使えるのがありがたかった。
栄養状態も衛生状態も悪く、ものすごく体を壊した。一度壊れたものは100%元には戻らないし、また壊れやすくなる。この9ヶ月間で私は不可逆の破壊を肉体にも精神にも及ぼしてしまった。ただ生きていただけなのに。
3回目の車中泊
大切な人を失うとどうなるか。老後が来る。テレビを見るか海を見るかしかやることがなくなる。「老後の過ごし方」みたいな本をたくさん読んだ。歳を取ると一日寝ているだけで筋肉が数%落ちるらしい。
ただ私はまだ20代なので年金は支給されない。テレビか海だけ見て生きていくことはできない。簡単な仕事からやり直そうと試みる。
車種 | 軽ワンボックスカー |
装備 | すのこ マットレス 断熱シート 除湿シート 各種布団 |
期間 | 10月上旬~ |
停車位置 | 前回と同じ |
家からどこへ行くにも一時間かかる、休みの日は図書館に行きたい、単純に家にいたくないなどの理由から、日常生活に車中泊を取り入れてみることに。 収入を得て自由に買い物ができるようになった |
装備諸元
す の こ |
押入れ用のものをホームセンターで購入 私は体重が45kgしかないが、そのまま乗っかってはしゃいでいると割れてしまうので、荷重が分散するよういい感じに置く必要がある。縦50cmのものと100cmのものを複数購入、2段にしていい感じに置いている。割れた箇所には釘を打った。 |
マ ッ ト レ ス |
超硬度を謳うものを購入したが、硬すぎて3時間おきに目が覚める。硬いマットレスを柔らかくする方法は存在せず、上になにか重ねるしかないらしい。 試行錯誤の末、ありあわせの長座布団+半分に折った厚手の毛布で爆睡できるようになった。ここまで重ねるならマットレスはいらないかもしれないが、すのこが割れるのを防いでくれそうなのでそのままにしている。 サイズは寝返りを気にして横80cmのものを購入したが、私の体格 |
断 熱 シ 丨 ト |
アルミホイルにスポンジ重ねたようなシート。特に冷える車の後部ハッチ付近に重点的に配備。 車内最後部は本当に冷えるので、これに加えて引っ越し用のでかいダンボールを置き足を突っ込んで寝ている。 |
除 湿 シ 丨 ト |
家でも使える、敷布団の下に敷くシート。 |
カビ対策
湿った空気が滞留するのが一番の原因で、雨や雪が降っていても少し窓を開けておいたほうがいいらしい。私は銭湯に行くなど車をほったらかしておける時は後部ハッチも少し開けておくようにしている。雨は地面に落ちるだけなので問題ないが、猛吹雪は少し開けた窓からも入り込んでくるので注意。
すでに生えてしまったカビについて
カビキラーをカビに直接散布したのち、シートやダッシュボードにビニール袋を被せ車内に放水。夏の晴れた日に半日放置し乾かした。もちろん車内はびしゃびしゃになるが、他にいい方法が思いつかなかった。内装がまだら模様にならないか不安だったが、無事新車に戻った車中連泊によるメンタルへの影響
先にも述べたが、車中泊は職務質問の可能性が常につきまとう。標高の高いところは安全と書いたが、「毎夜山へ向かう不審車両がある」と怪しまれる可能性も0ではない。毎晩同じところで寝ていると不安になるため「今日はどこで寝ようかな」という選択を毎晩強いられる。
いつ誰が来るかも分からない場所に居続けること自体かなり心理的圧迫感がある。ここはお前の居場所じゃない場所に居続ける後ろめたさがある。サバンナのド真ん中で寝ているシマウマのような気分になる。心が休まらない。
バカみたいな暮らしを続けた結果いつの間にか正気値が減っていたこと、また母方のばあちゃんとばったり再会して晩御飯を食べさせてもらった結果「なんであんな家に生まれたんだろう」「どうしてあっちの家だったんだろう」という気持ちが強くなってきて余計家に居づらくなり、また山にひきこもるようになってしまった。人間と会うのが嫌になり、年末も正月もずっと山で一人で過ごした。川の音だけひたすら聞いていた。
あとがき
さもひきこもり克服しましたよみたいな顔で「ひきこもりはこうしろ!」みたいな文章をいくつか書きましたが、結局またひきこもりに戻ってしまいました。「タバコ辞めたきゃなんでも聞いてくれ!オレは禁煙4回成功してるから」的な説得力のなさがありました。実際ひきこもり目線で読み返しても欠片も励まされなかったし何か期待して読んでくれた人にはゴメンとしか言えない。
ひきこもりどころかめちゃめちゃアウドドアじゃねーか!と思われたかもしれない。「部屋から出ない」というより「人に会わない」のがひきこもりなのだと私は思う。
その辺のお店の店員さんには会うが、所詮システムであってNPCと変わらない。誰にも会わない。学生の頃は一週間も友だちに会わないだけで気が狂いそうになったけど、年単位で誰にも会わなくなってからはその辺が麻痺してきた。
母方のおばあちゃんはよくしてくれたし、なんなら旅行に行こうとも言ってくれたのに結局行かなかった。種違い
もう少し会うことがあれば勉強を好きになるように仕向けることができたと思う。自分の人生の失敗を生かして、他人の人生にポジティブな影響を与えることができたと思う。でも私と違って彼の人生には何の心配もないからどうでもいいんだよな。私という失敗があったからこそ彼は健やかに育つのだろうとも思う。多分もう会わない。嫌いになったわけでも嫌われたわけでもないのに。
まともなフリして調子のいいこと言うのがつらくなってきたというか、できなくなってきたので書きました。書きたいことはいっぱいあるけど、明るい話は元気がないと書けない。もうこうやって壁に向かって喋るくらいしかできることが何もない。
今日も山の上で寝ている。ここには誰も来ない。来てほしくない。でも私が居ていい場所でもない。
*1:生きる気がないなら死ねやと言われ居づらくなった