一人と一人(6)


 切符を買ってホームへ。そこで別れるつもりだったが、最寄り駅まで…と言われてついていくことにした。適当な列に並んで電車を待つ。


 月曜夕方の帰宅時間帯。学生やスーツ姿のおじさんでごったがえす中、サボりの不良が二人混じっていた。不良とは、よくないという意味である。


 そういえば首は痛くないの? 空いた手で髪を分けてみる。いつかの約束はちゃんと守ってくれていたようだった。そのまましばらく頭をなでた。顎か肩くらいの高さで、彼女は借りてきた猫のようにおとなしくしていた。やがて電車が来た。









 見慣れない景色が流れていく。トンネルをいくつか抜け、遠くに開けた山と湖、そして街。ローカルっぽいスーパー、歯医者の看板、線路沿いの平べったいマンション・・・。


 ここから東に何百kmも離れた、去年まで住んでいた街に雰囲気が似ていた。私はどこでどう生きるのか決めあぐねていたが、この国の景色はどこもそんなに変わらなくて、別にどこでもいいのだと思った。


 あと十分たらずでお別れだ。寂しさや名残惜しさは不思議となかった。また来ればいいからだ。左隣の彼女を見やるとスマホをいじっていた。寂しかった。


 向こうはそうでもないのかな・・・車内広告をぼーっと眺めていると、帰りの電車の時間を教えてくれた。私は笑った。待ってれば来るのに。一日に6本しかバスが来ない田舎ではないのだ。でも嬉しかった。


 年期の入った窓のない、白塗りの通路で小さく手を振って別れた。私は元来た階段を上り、ホームに戻った。お堅そうな字を書くわりにはかわいらしい響きの駅だった。本当にそう読むの? さっきまで聞き返していたのがすでに少し懐かしかった。電車は時間通りに来た。








7月3日

 18時半、再び京都駅。バスまではやはり4時間半ほどあった。寝不足で疲れきっていた。とにかくどこかに座って休みたかった。私はヨドバシのマッサージ椅子に座ったり、ドンキのマッサージ椅子に座ったりした。これでもかというほど足の裏をいじめ抜かれた。 足の裏が本当に痛かった。


 ヨドバシカメラ前のテラスに腰かける。中華風のお姉さんがパネルを持って英語で接客していた。台風が来る前のもやっとした大気のせいもありいつもよりぼんやりとしていた。何か京都っぽいものを食べて帰りたい気もしたが食欲はなかった。昨日食べたからいいか。京風白味噌ラーメン・・・。


 帰りのバスを予約し、時が過ぎるのを待った。









 22時過ぎ、私は疲れた体に鞭打ち鴨川を北上していた。予約したはずのバスは会員登録までしか出来ていなかった。入力画面が多すぎる以上仕方のないことだった。


 歩きながら、今日はありがとう的な文章をずっと考えていたがはかどらなかった。祇園四条駅近くのバス停、しばらく待っているとキャリーケースを引いた乗客がもう二人くらい来て、彼女からのDMも来た。私はもう5分待ち、気持ち早めに来たバスに乗り込み、座ってゆっくり読んだ。充電されたような気がすると書いてあった。


 私は改めて今日のことを思い出し、かわいいかわいい・・・と返した。きゅんきゅんする…と返ってきた。IQが下がってきていた。3列ゆったりシートよりすいてる4列シートのほうがゆったりできるんだと思った。私は眠りについた。









 翌朝8時、燕三条駅。予定のバスに乗れなかったせいで遠回りになってしまった。さらに昨日まで見かけなかった台風がJRに直撃し全線運休運転見合わせ16時復旧予定。どしゃ降りの中をさらに歩き回り、バスを乗り継ぎ直江津港に着いたのは14時7分、最終便の出港3分前だった。




 その7に続く